企業にとって、職場環境を整えることは重要です。「職場のレイアウトを整える」「使いやすく便利なツールを導入する」「労働時間を見直す、」「人間関係改善を試みる」などさまざまな改善部分があるでしょう。本記事では、従業員のメンタルヘルスの不調を予防するために、企業がどのようなことを取り組めばよいのか解説します。
そもそもメンタルヘルスケアとは?
メンタルヘルスケアという言葉はよく聞くようになったものの、しっかり意味を把握している方は少なくありません。企業の人事担当としてメンタルヘルスケアに関わるなるなどあれば、内容をしっかり把握しておきましょう。
メンタルヘルスとは何か?
メンタルヘルスは、心の健康状態のことを指します。「自身の能力を発揮できる」「自分でストレスに対処できる」「生産的に働ける」「地域やコミュニティに貢献できる」といった状態をWHOでは定義しています。やる気がある、心が軽い、心が穏やかであるなどといった場合は心が健康状態であるといえるでしょう。
メンタルヘルス不調とは
風邪をひいたり病気をしたりと、体は健康な時・不調な時があります。心の健康も好調な時、低調な時がありますが、長期間心の状態が悪い場合はメンタルヘルス不調といえます。メンタル不調が続くと、悲しみや憂うつ感、不安感、無力感が続いてしまうといった心の状態が現れやすいです。
また食欲がなくなってしまう、寝つきが悪い、動悸がするといった体の不調も心の健康が影響している場合もあるでしょう。ストレスを感じることにより、消極的になる、周囲との交流を避ける、飲酒や喫煙量が増える、身だしなみがだらしなくなってしまうなど行動にも影響が出ることも多いです。
メンタルヘルスケアを行うメリット
企業でメンタルヘルスケアを行うメリットには、どのようなものがあるでしょうか。以下に、メリットついて解説します。
企業や従業員の生産性につながる
メンタルヘルスケアを行うことで、メンタルヘルス不調の従業員の判断力、想像力などを取り戻すことのサポートになるでしょう。従業員が十分に能力を発揮できる環境を整えることで、生産性の改善、ミスや事故の予防、休職者、離職者の発生の抑止といったメリットがあります。
企業の将来性や業績につながる
近年、ブラック企業やホワイト企業といった単語が定着してきました。職場環境が悪く、メンタルヘルス不調の従業員への対応を怠ると、離職率が高くなってしまいます。それにより、人材の損失になる、従業員の悪い口コミが広まってしまうなど不利益を受けかねません。
質のよい人材を獲得するためには、企業イメージを損なわないように取り組む必要があります。給与、福利厚生、メンタルヘルスケアに対する体制が整っているかどうかは、求職者が着目しやすいポイントです。
メンタルヘルスケアを実施することで、在籍している従業員の健康を守るとともに、将来の従業員の健康を守る、企業イメージを守ることにもつながるでしょう。
メンタルヘルスケアを行う上での課題・ケアの流れ
企業でメンタルヘルスケアに取り組む場合、デリケートな問題であることを理解してから課題に向きあう必要があるでしょう。
特性を把握しておく
病気やけがのため体の健康を損なっている場合と異なり、心の健康については客観的な測定方法が確立してしません。本人から聞き取りを行う必要がありますが、聞き取りが難しい、本人がうまく言語化できないといったこともあるでしょう。
原因、不調に至った過程、症状の深刻さは個人差が大きいです。そのため「原因の追究や対策が難しい問題である」ことを把握した上で対応しなければいけません。
連携を考える
職場におけるメンタルヘルスは職場環境の改善、人事異動などに影響を与えます。人事、労務、同じ職場の上司や同僚などにも関係してくる問題です。そのため、配置転換、業務量の調整などの方針を固めるためには多方面との連携をスムーズに行えるよう、事前に準備しておきましょう。
また、職場環境の問題だけでなく、家庭での問題から心が不調をきたす場合もあります。プライバシーに配慮し、産業医を頼るなどして慎重にアプローチする必要があるでしょう。
メンタルヘルスケア実施の流れ
企業におけるメンタルヘルスケア実施の際は、まず職場環境を整えるところからはじめましょう。メンタルヘルス不調者が出ないよう業務量を見直す、ストレスチェックを行うなどして環境を整えます。
その次に、不調者を発見できるよう環境を整えます。相談窓口の設置、産業医との面談といった相談しやすい環境を整えましょう。休職者がいる場合は、休職者復帰のための支援に取り組みましょう。業務量の調整、フォロー、専門家の指導のもと、職場復帰支援プログラムやトレーニングを導入するといった対応などを行います。
こうすることで、休職者がスムーズに職場復帰できる環境を整えます。流れに沿って職場環境を整えることで、従業員の定着率を高めましょう。
まとめ
従業員が十分に力を発揮するには、心身の健康が大切です。心の健康は周囲から見てすぐわかるものではないため、不調が大きくなる前にケアすることが大切です。企業でメンタルヘルスケアに取り組むことで、従業員の定着率アップや業績アップ、企業イメージの向上などにつながります。しかし、メンタルヘルスはデリケートな問題です。人事だけでなく労務、部署などで連携をとる、産業医を活用するなどして取り組むとよいでしょう。