昨今では労働者の健康・安全に対する意識が年々高まっており、産業医の仕事や役割も重視されるようになっています。今回は産業医の概要や嘱託産業医と専属産業医の違い、産業医を選任するメリットに加え、選任の流れについてもくわしく解説します。産業医の選任を考えている企業担当者は、ぜひ参考にしてください。
嘱託産業医と専属産業医の違いとは
産業医は企業の従業員の健康・安全を守るために重要な役割を果たす職業です。ここでは、産業医の概要や、嘱託産業医・専属産業医についてもくわしく解説します。
そもそも産業医とは
そもそも産業医とは、企業の従業員の健康管理や労働環境整備について、医療の面から専門的なサポート・アドバイスをする仕事です。
通常の医師は病気やけがの患者さんに対して、適切な医療を提供することをメインの業務としているのに対し、産業医は企業の従業員の健康を保つこと・病気やけがを予防するため労働環境改善や衛生教育をおもとしています。
産業医には嘱託産業医と専属産業医の2種類がある
産業医は嘱託産業医と専属産業医の2種類に大別できます。嘱託産業医と専属産業医では勤務する企業の規模が異なり、嘱託産業医は比較的小規模な企業で非常勤勤務するのに対し、専属産業医は従業員1,000名以上の規模が大きい企業で常勤勤務するのが特徴です。
ただし、従業員が500名以上で有害物質発生などの指定業務を行う企業では、嘱託産業医ではなく専属産業医の採用が必要です。また、嘱託産業医は兼任が可能であるのに対し、専属産業医は1企業の担当のみ可能となります。勤務スタイルは嘱託産業医が最低月1回、専属産業医が週3日以上かつ1日3時間以上となります。
産業医を選任することで企業が得られるメリット
企業には産業医の選任義務があり、労働安全衛生法第13条によると、従業員が50名以上の企業では必ず産業医を選任しなければなりません。
また、従業員数が3,000名を超える場合には、専属産業医を2名以上選任することが求められます。産業医を選任することのメリットはさまざままです。ここでは、産業医を選任することで得られるメリットについてくわしく解説します。
労働環境を整備できる
産業医を選任すると職場の労働環境を健康・安全の側面から定期的にチェックしてもらえるため、安全で働きやすい環境を整えることが可能です。働きやすい環境が整備されれば、従業員が安心して業務に取り組めるほか、仕事のストレスも大幅に軽減されるでしょう。
生産性アップにつながる
従業員の健康・安全が守られることでひとりひとりが前向きな気持ちで安心して働けるため、結果として生産性向上にもつながります。疲労によるパフォーマンスの低下やけが・病気による欠員を防止できるのも魅力のひとつです。
従業員の定着率が上がる
従業員が心身ともに健康に働ける環境が整っている企業は、従業員の定着率が高い傾向にあります。
従業員の入れ替わりが激しい職場は、安定したサービスを提供することが難しくなったり、人材が育ちにくくなったり、従業員が安心して働ける環境を保つことができません。
離職することなく長く働いてもらえる人材を確保できることは、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
企業のイメージアップが期待できる
自社の従業員を大切にしている企業は社会的にも信頼性が高くなるため、求職者や取引先向けへのイメージアップが期待できます。周囲からの信頼を得られることでビジネスチャンスをつかめる可能性も高く、企業活動にもプラスの影響を与えられるでしょう。
産業医を選任する方法
産業医を選任する際のステップ・流れについてくわしく解説します。
選任目的を洗い出す
まずは自社の課題や健康・安全面において重視したいことを洗い出し、産業医を選任する目的を明らかにしてください。目的が明確になればニーズにあった産業医を探しやすくなります。
助成金の利用可否を確認する
産業医の選任行為は、条件に当てはまる場合には助成金の対象となります。助成金の対象であれば選任コストをカットできるため、契約前に国の助成金制度を確認しておくのがおすすめです。
産業医を探して契約する
産業医は専門の紹介会社や医師会などに問い合わせて探すのが有効です。それぞれの産業医によって専門分野やこれまでの経験・実績が異なるため、始めに洗い出した目的・ニーズにあった人選をすることが重要となります。契約したい産業医が見つかれば条件や勤務日などをすりあわせて契約に進みます。
届け出をする
産業医の選任後は労働基準監督署への届け出が必要です。届け出には期限が設けられているため、契約後は早めに手続きを済ませましょう。
まとめ
今回は、嘱託産業医と専属産業医の違いや産業医を選任することのメリットに加え、産業医を選任する際の具体的な流れについてもくわしく解説しました。産業医は所属する企業の従業員の健康・安全をも守る仕事であり、所属する企業の規模によって嘱託産業医と専属産業医の2種類に大別できます。嘱託産業医は小規模な企業で非常勤として勤務するのに対し、専属産業医は従業員1,000名以上の会社で常勤として勤務します。産業医を選任すれば職場環境が整うことで従業員のモチベーションアップや生産性アップにつながるほか、企業のイメージアップによって求職者や取引先からの社会的な信頼も高まるのがメリットです。産業医選任を検討している人は、今回の記事をぜひ参考にしてください。